失われた宝物〜ざぶん賞2012東北ブロック選考委員会賞受賞〜
【油戸】菅原颯人(はやと)君

失われた宝物
鶴岡第五中学校 2年  菅原颯人

 僕の住む油戸地区には、すばらしい海があります。海水浴をしたり、魚を釣ったりできる、とても平和な海です。しかし、ここ数年、「平和な海が盗まれる」という事件が多発しています。「海が盗まれる」とは、どのようなことだと思いますか。油戸の沖合に「あね島」という大きな岩があります。そこは、岩ガキがたくさんとれる場所で、地元の漁師さんもとってはいけないことになっています。そんなあね島から、数百万円相当の岩ガキが「密漁」されました。はじめは、他人事だと思いました。自分の家は、漁師をしていないし、カキなんか食べなかったからです。しかし、地元の漁師さんは、もうかんかんに怒っていました。そのせいで、海に潜っていただけでも、「何をとっているんだ」と、疑われるときが多くなりました。これでは、遠くから来たお客さんも、楽しく潜って遊べなくなってしまうのではないかと思いました。きれいな海で育った岩ガキは、とってもおいしいに違いありません。密漁してしまった人の気持ちもわかります。しかし、どんなにたくさんとれるからといって、「法」に触れることをしてはいけないし、それが「海のマナー」だと思います。海のマナーを守ることで、生命の源である「海」を次の世代へきれいなまま、生き物が豊富なまま、残すことができます。ですから、まず、一人ひとりが「海のマナー」を守っていくべきです。

 地域の漁協組合では、「密漁パトロール」をはじめ、あね島をパトロールするようになりました。その様子を見ていると、なんだかあね島が、油戸の「宝物」のように思えてきました。いや、思えるのではなく、「宝物」だったのです。あね島だけでなく「海」自体が僕らの宝物だったのだと思います。ですから、僕らには、海を守らなければならない「義務」があります。守らなければならない宝物なのです。この夏、「魚釣島」や「尖閣諸島」の問題が、ニュースなどで多く報じられていました。どちらも領海にかかわっています。海は世界中、みんなの「宝物」。決して、宝物を独り占めにしてはいけないと思います。ですから、平和に、最善を尽くして、解決してほしいです。そして、世界中、みんなで、「宝物」を守っていきたいです。これからも、ずっと、未来のために、宝物のために...。

<鶴岡市立鶴岡第五中学校からのコメント>

 「ざぶん賞」聞き慣れない賞だと思いますが、テーマは生命の源である、水に関係した内容の作文・童話・詩・手紙。たとえば、「海や川、湖などについて、あなたの思ったり、感じたりしていること。」「水や命について、あなたが考えたり、願ったりしていること。」「水に関することで、あなたが経験した楽しかったこと、怖かったこと。」などです。今回颯人君は「失われた宝物」というタイトルで、作文を出品しました。概略は、彼が住む油戸地区の海を、ある事件を契機に「かけがえのない宝物」であることに気づき、生命の根元である「海」を、みんなで守っていく義務があるということを述べたものです。颯人君の、地域を愛し、誇りとし、守っていきたいという気持ちがひしひしと伝わってきます。ご一読下さい。