加茂水族館前山の祠と安置仏について
加茂水族館前山の祠と安置仏について(長浜谷弘子 様からのお問い合わせへの回答です。長浜谷弘子 様。お問い合わせありがとうございます。)
加茂水族館前山の祠と安置仏について、自治会にて調査をさせていただきましたので、ご回答いたします。
先ず、質問の閻魔様に見えた石仏は、頭巾の形からそのように見えたのかと思いますが、実際はお地蔵様と思われます。
そうすると、何故、あの場所にお地蔵様の祠があるのか、納得していただくために、その由来を少し説明しなければなりません。
昔から、この地域の海岸線に点在する集落に住む人たちの多くは、漁業で生計を立てておりました。
その、隣接する集落がお互いに、諍い(いさかい)無く漁をするために、お互いの漁業区域の境界(磯境・方言ではイソザゲェ)を定めることが必要であったと考えられ、そして、その境を示すものが、海に浮かぶ漁船から容易に確認出来るものでなければならないことから、例えば、背後の山から落ちる沢や滝、海岸線が海に突き出た岬などが、磯境の目印に多く設定されているようです。
そして、それらの場所は、徒歩で歩いて往来していた時代には、貴重な飲み水を補給する所であったり、疲れを癒やす所であったと考えられ、そこを利用する人たちの感謝の気持ちが野地蔵や祠になり、信仰の対象となり、また、磯境としての役割も時代を経た現在に守り継がれ、その機能を今日まで充分果たして来ていると言えます。
以上の事柄をふまえた上で、話を水族館前山の祠に戻しますが、この祠も当初、水族館の無かった頃は道路下まで磯が迫っており、磯境(今泉と加茂)としての役割を果たしていたと考えられています。この祠も当初はお地蔵様だけだったものが、時代を経て、年月を経て、遭難や事故で命を落とされた人たちの鎮魂を願うための神仏がお地蔵様と一緒に安置されて来たと考えられます。
祠のお地蔵様の右側の石仏はご指摘の通り観音菩薩で、持ち物から文殊様の立像ではないかと思われます。また、左側の大黒様群は、近所の家庭の台所か神棚に祀られていたものを祠に安置したものと考えられます。
以上、取材協力 今泉、佐藤豊吉氏 取材と考察:加茂自治振興会 田村隆司